ファクタリングは、売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、期日より早く資金調達ができます。しかし、同じ売掛金を別のファクタリング会社に買い取ってもらうことはできません。ファクタリングの二重譲渡は犯罪であるのが理由です。
そこで今回は、このファクタリングの二重譲渡がバレることはあるのか、バレた場合どのような罪に問われるのかなどについて解説していきます。
ファクタリングにおける債権の二重譲渡とは?
ファクタリング会社で現金化した売掛金を、別のファクタリング会社でも同様に買い取ってもらい現金化する行為は、ファクタリングにおける債権の二重譲渡と見做される恐れがあります。
ファクタリングにより売掛金を現金化した場合、利用者は売掛金の期日にファクタリング会社へ入金する義務があります。二重譲渡した場合、1社しか入金できず、別のファクタリング会社には通常入金ができません。
ファクタリング会社は、二重譲渡を防ぐために、債権譲渡登記を行うことがあります。一番に登記を完了することで、第三者に売掛金を受け取る権利があることを示すことができるからです。
この債権譲渡登記を行っていないファクタリング会社は、売掛金を受けとる権利がないため、二重譲渡が行われた場合損失を被ることになります。
そのため、ファクタリング会社は利用者に対して損害賠償請求等法的措置をとるのが一般的とされています。
ファクタリングで債権を二重譲渡するとバレるのはなぜ?
ファクタリングで二重譲渡した場合、ほとんどバレてしまうのが現状です。主な理由として、次の2点があります。
債権譲渡登記でバレる
ファクタリングを申し込むと、ファクタリング会社は審査を行います。その際、買取予定の請求書が二重譲渡でないかを確認するため、法務局で債権譲渡登記の有無をチェックします。
登記の確認を後まわしにすることが多いので、ファクタリング会社は現金化した時点では売掛金に債権譲渡登記がされているかどうかわかりません。
しかし、債権譲渡登記が買い取った売掛金に設定されている場合、ファクタリング会社は企業が二重譲渡を行っていることに気づきます。
売掛金の支払い期日でバレる
売掛金の支払い期日から二重譲渡が発覚するケースもあります。2社間ファクタリングで契約を交わした場合、ファクタリング会社は利用者との間に、債権譲渡契約のほか売掛金回収業務委託契約も交わさなければなりません。二重譲渡している企業は、売掛金回収業務委託契約を複数のファクタリング会社と交わしていることとなります。しかし、売掛先から入金される売掛金でファクタリング会社に入金できるのは1社のみで、その1社以外は契約を履行できません。
企業は、未入金のファクタリング会社から入金を催促されます。もし、支払いがないならば、その時点でファクタリング会社は企業が二重譲渡を行っていることに気づきます。
ファクタリングで債権を二重譲渡したらどうなる?
ファクタリングで債権を二重譲渡した場合、企業はファクタリング会社から、刑事・民事双方で責任を問われることになります。
責任の問われ方として、以下の3つのケースがあります。
- 詐欺罪や横領罪などの罪に問われる場合がある
- 懲役刑を科される場合がある
- 損害賠償を請求される場合がある
それぞれについて解説します。
詐欺罪や横領罪などの罪に問われる場合がある
売掛債権を二重譲渡した場合、詐欺罪や横領罪に問われる恐れがあります。
詐欺とは、他人をだまして金や品物を奪ったり、あるいは損害を与えたりすることです。
詐欺罪の刑罰は、刑法第246条に「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」と定められています。
また、、別の罪である横領罪にも問われる場合もあります。
横領とは、人が所有している物を横取りする行為です。
ファクタリングにおける二重譲渡は、業務の上での横領に該当すると考えられています。刑法第253条の「業務上横領」には、「業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する」と定義されています。
懲役刑を科される場合がある
二重譲渡を行うと、企業経営者は懲役刑を科されるケースがあります。
ファクタリングの二重譲渡を企業が行うことは、ファクタリング会社に対して犯罪を犯したことを意味します。一般的に、企業犯罪は個人の犯罪より社会的な影響が大きいと捉えられており、経営者は法的および道義的責任を負う必要があるとされています。。
詐欺罪や横領罪が適用された場合、10年以下の懲役となる可能性が高くなります。
二重譲渡の内容によっては、猶予がつかず、実刑の判決を受けるかもしれません。
ファクタリングの二重譲渡を企業が行う理由として、費用の支払いにメドが立たず、やむを得ず行ってしまうケースもあるかもしれません。しかし、二重譲渡という犯罪を犯すことになるので、企業は社会的な制裁を受け、信用を失墜することになるでしょう。
損害賠償を請求される場合がある
詐欺罪や横領罪といった刑事上の刑罰だけではありません。二重譲渡により、ファクタリング会社が被った損失を損害賠償請求という形で求められる場合もあります。
その場合、企業はファクタリング会社から受け取った金額分を支払うだけではありません。訴訟に要した弁護士費用なども必要です。
刑罰だけでなく、損害賠償請求をされることになると、企業は事業運営が厳しくなるでしょう。
事業運営が難しくなると、企業は自己破産の手続きを行う場合があります。
二重譲渡という不正行為がある場合、「免責不許可事由」に該当する可能性があるため、企業は、自己破産が認められない恐れがあります。