ファクタリング利用者がファクタリング会社への入金を何らかの理由で怠った場合、ファクタリング会社は取り立てを行います。
しかし、ファクタリング会社は消費者金融や貸金業者でないので、貸金業法に定められた取り立て方法を遵守する必要はありません。
そのため、なかには悪質な取り立てを行うファクタリング会社がいるのではないかと不安に思っている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、ファクタリング会社の取り立てについて解説します。
正規のファクタリング会社が行っている取り立ての内容や、違法業者の取り立ての特徴について紹介します。
違法業者の取り立てがどのような犯罪に該当するのかについても解説していますので、万が一遭遇した場合の参考にしてください。
ファクタリング会社は取り立てをするのか
ファクタリングには貸金業法が適用されない
ファクタリングを利用し、利用者がファクタリング会社に入金を行わなかった場合、ファクタリング会社は取り立てをするのか気になる利用者もいるかもしれません。
結論からいうと、取り立てを行う可能性があります。ただし、ファクタリング会社は貸金業者でないので、貸金業法に沿った方法では回収を行いません。
貸金業法とは、消費者金融や貸金業者に適用される法律です。貸しすぎを防止する総量規制や上限金利、さまざまな規制があります。取り立ての方法も規制されているひとつです。
禁止されている取り立ての方法として以下のようなものがあります。
- 21時から翌朝8時までの取り立ての禁止
- 居宅以外の場所への訪問の禁止
- 債務者等以外の者に対し、債務者等に代わって債務を弁済することを要求すること
ファクタリング会社は、利用者との間で「債権譲渡契約」を交わしています。貸金業者が交わす「金銭消費貸借契約」ではありません。
利用者が売掛金の入金に遅延が発生した場合、ファクタリング会社は貸金業者とは異なった方法で債権を回収します。
ファクタリング会社の取り立て方法
ファクタリング会社は、利用者が売掛金の入金が遅れた場合、どのような手法で回収するのでしょうか。次の4つの手法で回収を図ります。
- 債務の支払状況を調査
- 利用者に任意の支払いを求める
- 支払督促や訴訟を起こす
- 強制執行する
それぞれについて解説します。
債務の支払状況を調査
利用者がファクタリング会社に入金しない弁明として、「売掛先から入金されていない」と回答する場合がよくあります。ファクタリング会社がはじめに行うことは、売掛先が利用者に対して本当に売掛金を支払っていないかどうかの調査です。
ファクタリング会社は、売掛先に対し、債権譲渡通知を送付し、売掛先への支払いの有無について確認しなければなりません。売掛先が、利用者に対し売掛金を支払っていない場合、ファクタリング会社は売掛先に対し直接取り立てを行います。
もし、利用者に売掛金を支払っていることが判明すれば、利用者はファクタリング会社に虚偽の報告を行っていることとなります。
利用者に任意の支払いを求める
売掛先が利用者に対して、売掛金の支払いを行っている場合、利用者はファクタリング会社に対し入金する義務を怠っていることになります。つまり債務不履行です。この場合、ファクタリング会社は、利用者に対して任意の支払いを求めます。
電話やメール、あるいは郵便で入金を促すのが一般的です。場合によっては、ファクタリング会社は事務所等に出向き、直接催促する場合もあります。
電話やメール、郵便での催促では、利用者は目にしていないなどと主張するケースもあるかもしれません。ファクタリング会社の中には、「内容証明郵便」を利用者あてに送付し、督促を行った証拠として利用する場合もあります。
支払督促や訴訟を起こす
任意の支払い依頼を行ったにもかかわらず、利用者から入金がない場合、ファクタリング会社は利用者に対し、裁判所で「支払督促」あるいは「訴訟」の手続きを行って取り立てを行います。
「支払督促」とは、金銭の支払や有価証券、あるいは代替物の引渡しを求める場合に有効な督促方法です。利用者の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てます。書類審査のみなので、裁判所に出向く必要がありません。
利用者から、支払督促を受け取って2週間以内に異議申し立てがあった場合、訴訟へと発展していきます。
もし、利用者から異議の申立てがない場合、債権者(ファクタリング会社)は強制執行の申立てができます。
強制執行する
支払督促や訴訟を行い、裁判所から判決がでているにもかかわらず、利用者がファクタリング会社に入金しない場合もあるかもしれません。
入金がない場合、ファクタリング会社は利用者の財産を差し押さえたり、不動産等を競売にかけたりして強制執行を行い、債権の回収を図ります、
具体的に、利用者の預金口座を差押えることで、口座の残高はなくなります。あるいは、利用者が所有する不動産を競売にかけ、不動産は第三者に所有権が移転され、売却金はファクタリング会社に支払われることとなります。
利用者は、強制執行により、事業運営は困難になるでしょう。ファクタリングを利用する場合、支払うべき金銭はきちんと支払うべきといえます。
違法業者の取り立て方法
ファクタリング会社の取り立ての流れを紹介しました。違法業者が取り立てる場合は、異なった方法で取り立てを行おうとします。異なった取り立て方法として、以下のような手法があります。
- しつこく電話をかけてくる
- 営業所に押しかけてくる
- 脅迫や嫌がらせをしてくる
- 周辺に支払いが滞っていることを暴露する
それぞれ順を追って説明します。
しつこく電話をかけてくる
違法業者が取り立てを行う場合、しつこく電話をかけてくるケースがあります。業者の中には日に100回以上電話をかけてくる場合があります。
貸金業法では、21時から翌朝8時までは督促の対象外の時間です。しかし、違法なファクタリング業者にとっては、深夜も早朝も関係ありません。1日中電話が鳴りっぱなしという苦痛を味わうこととなる恐れがあるかもしれません。
営業所に押しかけてくる
悪質業者は、電話での取り立てだけでなく、営業所に直接やってきて取り立てを行うこともあります。
支払いを請求したり大声を出して騒いだりして、営業所だけでなく、近隣住民にも迷惑をかける恐れもあります。営業所に来て騒がれることにより、近隣住民は利用者が普段どのような事業を行っているのか、と不審に思われることもあるかもしれません。
脅迫や嫌がらせをしてくる
少しでも入金が遅れれば、悪質業者は、利用者に脅迫や嫌がらせを行ってくることが考えられます。営業所だけでなく、利用者の家族や親戚にまで電話をかけて入金を催促することを行い、いやがらせを行うことで、精神的に追い詰めます。
入金できないならば、利用者が取り扱っている在庫の商品を差し出すように要求するなどして脅迫してくるかもしれません。
周辺に支払いが滞っていることを暴露する
ファクタリングで入金が遅れた場合、大声で回りにお金を返すように叫んだりして周辺に入金が滞っていることを暴露する違法業者もいます。
大声だけでなく、延滞している旨のチラシを配ったり、立て看板を置いたりして延滞している事実を明らかにする行為をとります。
関係ない第三者にまで知られることとなり、信用の低下につながる恐れもあるでしょう。
違法なファクタリング会社の見分け方
ファクタリング会社は貸金業者でないため、貸金業法の対象外です。しかし、どのような取り立てを行ってもいいことではありません。
違法なファクタリング会社の見分け方として、取り立ての方法があります。
違法なファクタリング会社は、おおむね以下のような違法な取り立てを行っている場合があります。
- 暴力および脅迫
利用者に暴力を振るった場合、傷害罪の適用を受けますし、脅迫を行えば脅迫罪や恐喝罪共用罪に該当します。
- 建造物侵入および不退去罪
所有者等の許可なく勝手に建物の中に侵入した場合、建造物侵入罪を問うことが可能です。帰ってほしい旨を伝えているにもかかわらず、いつまでも居座る場合、該当するのは不退去罪です。
- 名誉棄損
入金が遅れ、取り立ての際に、まわりに聞こえるように「金返せ」等と騒いだり、チラシを配ったり、または立て看板に遅れた旨を表示したりした場合、名誉棄損罪が成立します。
- 商品の引き揚げ
未入金である対価として、利用者の商品を引き揚げた場合、該当するのは窃盗罪です。
悪質な取り立て被害に遭った場合は警察に相談しよう
ファクタリング会社は、債権譲渡により、利用者から売掛債権を譲渡する仕組みです。
ファクタリング会社は消費者金融や貸金業者のように貸金業者でないため、ファクタリング会社の取り立ては貸金業法に定められた方法で行う必要はありません。
しかしながら、違法なファクタリング会社は、しつこく電話をかけてきたり、営業所に押しかけたりして取り立てを行います。
脅迫や嫌がらせを行ったり、近所に支払いが滞っていることを暴露したりするかもしれません。
これらはすべて犯罪に該当します。もし、違法なファクタリング会社を利用して、以上のような悪質な取り立てに遭った場合、泣き寝入りすることなく警察に相談することを推奨します。
毅然とした姿勢が、自分自身を守ることになるでしょう。