ネットショッピングを利用する人が増え、運送業界はより一層多忙になっています。一方で売上債権の入金サイトが遅く、資金繰りに苦労する運送業者も少なくないでしょう。
本記事では、資金調達のひとつの手段としてファクタリングを利用するメリットや、運送業界とファクタリングの相性がよい理由などを解説していきます。
運送業界はファクタリングの利用が向いている理由
運送業界とファクタリングの相性がよい理由に「資金繰りのタイトさ」と「予期せぬ出費」があります。具体的な内容を確認していきましょう。
資金繰りがタイトであるケースが多いから
運送業界では、売掛金が発生してから入金されるまでに2~3ヶ月ほどかかる傾向です。仮に「末締め翌々月末払い」であれば、7月上旬に発生した売掛金の入金は9月末になります。3ヶ月近く入金がないにもかかわらず、その間も従業員への給与の支払いなどはストップしません。
このように入金サイトが遅いと手元の資金が少なくなり、資金繰りが厳しくなる可能性があります。しかし、ファクタリングを利用すれば売上債権の本来の期日よりも前にお金が入ってくるので、手元資金に余裕を持てるようになるでしょう。
予期せぬ出費が発生するから
運送業界では「車両故障・事故の発生」や「輸送費の変動」などが原因で、予期せぬ出費が発生する可能性があります。
従業員が車を運転している以上、交通事故の可能性は常にありますし、その場合は車両の修理や買い換え、損害賠償などが必要になるでしょう。保険によってカバーできる部分もありますが、そもそも高額な保険料の捻出が必要ですし、有事の際に損害額が保険金を超えた場合は、その分を補填しなければなりません。
また、輸送費の変動の影響をダイレクトに受けやすいのも運送業界の特徴です。軽油価格の上昇によって大きな影響を受けても、その分を運賃に上乗せすることは容易ではなく、営業利益率は不安定になります。そのような価格の高騰に対して、経営者はすぐに抜本的な対策を取りづらいものです。
上記のような場合に売上債権さえあれば、ファクタリングの利用によって素早い資金調達が可能になるでしょう。
ファクタリングのメリットとは
ファクタリングのメリットとしては「スピードが早い」「信用情報に影響しない」「2社間ファクタリングは取引先に知られない」があります。
最短即日で資金が手に入る
政策金融公庫や銀行の融資は、厳密な審査が実施されるので時間がかかるでしょう。一方、ファクタリングは売上債権をファクタリング会社に買い取ってもらう仕組みなので、取引先の信用情報に大きな問題がなければ、素早く資金調達できます。
必要書類の準備がスムーズに進めば、最短即日の資金化も可能です。
ただし、利用するファクタリング会社や状況によっても異なるので、事前にしっかり確認しましょう。
信用情報に影響しない
銀行などの金融機関から融資を受けると信用情報に記録されますが、ファクタリングを利用しても売掛金が減るだけなので自社の信用情報に影響しない特徴があります。
そもそもファクタリングは与信取引ではありません。そのため、ファクタリングを利用する側の信用情報は確認されないのです。
ファクタリングの審査で重視されるのは取引先の信頼性です。仮に自社の信用情報が良いといえない状態であっても、ファクタリングであれば問題なく資金調達できる可能性がああります。
取引先にファクタリングの利用を知られずにすむ
ファクタリングは2社間ファクタリングと3社間ファクタリングに分かれますが、2社間ファクタリングであれば、取引先にファクタリングを利用したことがバレなくてすみます。
2社間ファクタリングとは、自社とファクタリング会社で結ぶ契約です。ファクタリング会社から自社に対し、手数料を差し引いた売掛債権の支払いが行われた後、自社が取引先から回収した売掛金をファクタリング会社に全額支払います。
一方で3社間ファクタリングは自社、ファクタリング会社、取引先で結ぶ契約です。ファクタリング会社に自社の売掛債権を譲渡した後、ファクタリング会社は取引先から直接、売掛金を回収します。
このように3社間ファクタリングは取引先の承認が必要なので秘密にできませんが、2社間ファクタリングであれば取引先に知られずに利用できます。
運送業がファクタリングを利用するメリット
運送業がファクタリングを利用すると、資金繰りの改善につながったり、設備などに投資する余裕ができたりします。くわしく見ていきましょう。
資金繰りの改善につながる
融資を受ける場合は時間がかかります。銀行などの金融機関は決算資料などを確認し、「現実的に返済可能かどうか」を審査する必要があるからです。最短でも2週間、長ければ1ヶ月程度の期間を見込まなければなりません。
ファクタリングは融資と違ってすぐに資金を手に入れられるので、資金繰りの悪化に素早く対応できるでしょう。
設備などに投資できる
繁忙期などに売上を伸ばすチャンスが訪れても、手元に資金がなければ、大型トラックの調達やドライバーの育成・募集費用の捻出が難しくなります。
前述したように銀行からの融資は審査に時間がかかりますし、必ず審査に通過できる保証もありません。一方、ファクタリングは取引先の信用情報が極端に悪くない限り、スピーディーな資金化を実現できるので、素早い設備投資が可能です。
ただしファクタリングは手数料がかかるので、「設備投資によって手数料以上の売上アップを見込めるかどうか」を検討することが大切です。
【注意点】ファクタリングを利用する前に
ファクタリングを利用する前におさえたいポイントに「手数料の発生」と「取引先にバレるリスク」があります。
手数料が発生する
ファクタリングを利用するには手数料がかかります。基本的に2社間ファクタリングよりも3社間ファクタリングのほうが手数料は低額です。
また、手数料は一律ではなく、ファクタリング会社によって異なるので注意しましょう。場合によっては印紙代などの経費が発生するので、事前確認が大切です。
取引先にバレる場合がある
先に解説したとおり、3社間ファクタリングの場合、ファクタリング会社と取引先の契約が必要なので、ファクタリングを利用したことが取引先にバレます。その結果、「売掛金の入金を待てないほど経営状況が悪いのだろうか?」と取引先に疑問を抱かれる可能性があり、自社に対する信用が低下するかもしれません。
取引先にバレないようにファクタリングを利用したい場合は、2社間ファクタリングがおすすめです。2社間ファクタリングは取引先の承諾を得られない場合も利用できます。
ただし、2社間ファクタリングのほうが、3社間ファクタリングよりも手数料が高めなので注意しましょう。
秘密重視なら2社間ファクタリング、手数料重視なら3社間ファクタリングという使い分けを考えてみてはどうでしょうか。
資金調達に困ったらファクタリングを利用するのもひとつの方法
運送業界は資金繰りがタイトなケースが多く、予期せぬ出費に見舞われるリスクがあるのでファクタリングと相性がよいでしょう。
ファクタリングのメリットは、信用情報に影響することなく、最短即日で資金が手に入る点にあります。2社間ファクタリングであれば、取引先に知られることもありません。
特に運送業界にとっては資金繰りの改善以外にも、設備投資に資金を回せるというメリットが大きいのではないでしょうか。
実際にファクタリングを利用する前は手数料を確認するとよいでしょう。