急増する「違法ファクタリング」の被害
近年、「即日現金化」「審査なしで資金調達可能」などと宣伝するファクタリング業者が急増しています。
しかし、その中には違法ファクタリング業者(闇金業者)が紛れ込んでおり、利用者が多額の返済や法的トラブルに巻き込まれるケースが後を絶ちません。
この記事では、
- 違法ファクタリングの定義
- 合法ファクタリングとの違い
- 違法業者の見分け方
- 被害に遭った際の相談先
をわかりやすく解説します。
ファクタリングとは?本来は合法な資金調達手段
まず前提として、ファクタリング自体は合法な資金調達方法です。
企業や個人事業主が「売掛金(まだ入金されていない請求書)」をファクタリング会社に売却し、
その代金を早期に受け取ることで資金繰りを改善する仕組みです。
◎ 仕組みの基本
- 売掛金をファクタリング会社に譲渡
- ファクタリング会社が手数料を差し引いた金額を即日入金
- 売掛先から入金があれば、そのままファクタリング会社が回収
この取引は「売買契約」にあたるため、貸金業登録は不要です。
しかし、この仕組みを悪用して「実質的に貸付」として金利を取る悪質業者が存在します。
これが「違法ファクタリング」です。

違法ファクタリングとは?実態は「闇金」と同じ
違法ファクタリングの定義
違法ファクタリングとは、ファクタリングの形式を装いながら、実態は「金銭貸付(融資)」を行っているものを指します。
つまり、
- 売掛債権の譲渡が実際には行われていない
- 名目上の手数料が、実質的に超高金利の利息になっている
といったケースです。
代表的な違法ファクタリングのタイプ
タイプ | 特徴 |
---|---|
給与ファクタリング | 給与を「売却」する名目で現金を貸し付ける。貸金業法違反。 |
個人向けファクタリング | 売掛金が存在しない個人に対して金を貸す。実態は闇金。 |
事業者向け偽装ファクタリング | 契約書は「売買契約」でも、中身は短期高利の貸付。 |
たとえば、10万円を受け取り、翌月に12万円を返済するよう求められるケース。
この2万円は「手数料」とされますが、年利に換算すると数百%〜数千%に達し、利息制限法や出資法に違反します。
給与ファクタリングが違法とされる理由
2020年、金融庁と消費者庁は「給与ファクタリング業者は貸金業法の登録が必要であり、無登録業者は違法」と明言しました。
給与ファクタリングでは、
- 利用者は「給料債権」を売却する
- 業者が翌月の給料日まで待って返済を求める
という形ですが、実際には「給料を担保にお金を貸す」構造です。
これは賃金の前借りを装った高利貸しであり、法的には貸金業に該当します。
したがって、貸金業登録をしていない業者が行えば貸金業法違反・出資法違反・詐欺罪に問われます。
■ 違法ファクタリング業者の特徴と見分け方
違法業者は巧妙に広告を作り、SNSや検索広告、LINEなどで勧誘を行います。
以下の特徴がある場合は、極めて危険です。
違法ファクタリングの特徴チェックリスト
チェック項目 | 危険度 |
---|---|
「審査なし」「即日入金」「ブラックでもOK」と宣伝している | ★ |
契約書が曖昧、または電子署名だけで完了 | ★★ |
手数料が20〜40%など異常に高い | ★★★★ |
返済日が「給料日」「翌月○日」など固定されている | ★★★★ |
「売掛先」ではなく「自分自身」が返済する形 | ★★ |
登録番号や所在地を開示していない | ★★★★★ |
LINEのみで対応・会社名が存在しない | ★★★★★ |
安全な会社との違い
合法的なファクタリング会社は、
- 登記簿謄本の提出を求める
- 売掛先企業の確認を行う
- 手数料が5〜20%程度
といった適正なプロセスを踏みます。
「簡単すぎる契約」「電話一本で現金化」は、ほぼ闇金業者と考えて間違いありません。
違法ファクタリングのトラブル実例
事例①:給与ファクタリングで返済地獄に
Aさん(会社員)は、SNS広告で見た「即日3万円現金化」に申し込み。
手数料1万円を引かれ、実際に受け取ったのは2万円。
翌月の給料日に3万円を返済する契約でした。
しかし、返済が遅れると「職場に連絡する」「家族に知らせる」と脅迫され、
最終的に法外な違約金を請求される事態に。
このような業者は、実質的に闇金と同じ手口を使っています。
事例②:個人事業主向けファクタリングで架空債権を作成
Bさん(個人事業主)は、「売掛金を現金化できます」との広告を見て契約。
しかし実際には売掛先は存在せず、単なる貸金契約でした。
返済が滞ると自宅に督促状が届き、法外な金額を請求されました。
違法ファクタリングの法的リスク
違法ファクタリング業者は、以下の法律に違反する可能性があります。
適用される法律 | 内容 |
---|---|
貸金業法 | 登録なしで貸付を行うと「無登録営業」で刑事罰対象。 |
出資法 | 年利109.5%を超える利息は違法。 |
利息制限法 | 元金に応じて上限金利15〜20%を超えると無効。 |
刑法(脅迫・恐喝) | 返済催促で脅しや嫌がらせを行うと刑事罰対象。 |
つまり、違法ファクタリングは犯罪行為であり、利用者側も被害者として扱われます。
被害に遭ったときの相談窓口
もし違法ファクタリング業者と契約してしまった場合は、すぐに専門機関へ相談しましょう。
主な相談窓口一覧
機関名 | 相談内容・特徴 |
---|---|
警察(110) | 恐喝・脅迫などの被害はすぐに相談 |
消費者ホットライン(188) | 全国どこからでも最寄りの消費生活センターへ |
金融庁 金融サービス利用者相談室 | 無登録業者・貸金業法違反の相談 |
弁護士会・法テラス(0570-078374) | 法的措置・契約無効の対応 |
日本貸金業協会(03-5739-3861) | 登録業者の確認・苦情対応 |
特に「給与ファクタリング」などは返済義務そのものが無効と判断された事例も多く、
早めに専門家へ相談することが重要です。
4. 自治体や商工会議所の支援制度
「制度融資」「助成金」「補助金」も活用可能です。
安全な資金調達方法の選び方【違法ファクタリングに頼らない5つの選択肢】
違法ファクタリングや闇金業者に手を出す前に、まずは安全で合法的な資金調達手段を検討しましょう。
ここでは、リスクが低く信頼性の高い代表的な5つの方法を紹介します。
それぞれの特徴・メリット・注意点を詳しく解説します。
① 銀行融資・信用金庫融資:最も正統で低金利な方法
銀行や信用金庫の融資は、企業や個人事業主にとって最も信頼性の高い資金調達手段です。
審査はやや厳しいものの、金利が低く返済期間も長期で設定できるのが最大のメリットです。
メリット
- 金利が年1〜3%と低く、返済総額を抑えられる
- 法人・個人事業主いずれも対象(業績に応じて柔軟)
- 銀行との取引実績が信用につながる
デメリット
- 審査に時間がかかる(1〜3週間程度)
- 赤字決算や税金滞納があると通りにくい
審査を通りやすくするポイント
- 決算書・確定申告書を最新年度分まで提出
- 事業計画書を作り、資金の使途を明確にする
- 既存借入の返済履歴を良好に保つ
ワンポイント:
「メインバンク方式」と呼ばれるように、普段から同じ金融機関を使うことで信用が蓄積します。
いざという時の融資がスムーズになります。
② 日本政策金融公庫の「制度融資」:創業・小規模事業者の強い味方
国が運営する日本政策金融公庫(JFC)は、特に中小企業・個人事業主の味方です。
創業間もない事業者や、担保・保証人がない方でも利用できる制度が充実しています。
代表的な融資制度
制度名 | 対象者 | 特徴 |
---|---|---|
新創業融資制度 | 創業1年以内 | 無担保・無保証で最大3000万円まで可能 |
国民生活事業融資 | 個人事業主・小規模企業 | 低金利・最長20年返済 |
女性・若者・シニア起業支援資金 | 起業希望者 | 事業計画に基づき柔軟に審査 |
メリット
- 金利が年1〜2%台と非常に低い
- 保証人・担保が不要な場合が多い
- 審査で「将来性」も評価される
注意点
- 審査には2〜3週間ほどかかる
- 書類(事業計画書・見積書など)の準備が必要
相談先
- 各地の日本政策金融公庫支店
- 商工会議所・商工会の無料相談窓口
③ 合法ファクタリングの活用:売掛金を即日資金化できる
銀行融資が間に合わない場合に便利なのが、合法的なファクタリング会社の利用です。
違法ファクタリングと異なり、「売掛債権」を実際に譲渡するため、貸金業法には抵触しません。
ファクタリングの主な種類
種類 | 特徴 | 向いている利用者 |
---|---|---|
2社間ファクタリング | 売掛先に知られずに即日資金化 | 急ぎで資金が必要な中小企業 |
3社間ファクタリング | 売掛先も同意。手数料が安い | 安定取引が多い法人 |
診療報酬・介護報酬ファクタリング | 医療機関・介護事業者向け | 公的債権で審査が早い |
メリット
- 最短即日で資金調達が可能
- 借入ではないため信用情報に影響しない
- 担保・保証人が不要
注意点
- 手数料は5〜20%程度が目安(あまりに高い業者は要注意)
- 売掛金が実在しない場合は利用できない
安全なファクタリング会社を選ぶポイント
- 公式サイトで所在地・会社情報を明記している
- 契約書をきちんと発行し、対面・オンラインで説明がある
- 「貸付」ではなく「債権譲渡契約」として明記されている
信頼できるファクタリング会社の例
- 株式会社ネクストワン:東京を中心に全国対応。最短即日資金化。
- 株式会社三共サービス:低手数料・契約透明性で業界大手。


合法的な会社を選べば、違法ファクタリングに巻き込まれるリスクをゼロに近づけることができます。
④ 自治体・商工会議所の支援制度:見落とされがちな低利資金源
意外と知られていませんが、地方自治体や商工会議所の「制度融資・助成金」も強力な資金調達手段です。
主な制度例
支援制度 | 内容 |
---|---|
制度融資(信用保証付き) | 自治体・信用保証協会・金融機関が連携して低金利で融資 |
小規模事業者持続化補助金 | 販路開拓・広告費用などに最大50万円補助 |
創業支援補助金 | 新規開業費用の一部を助成 |
利子補給制度 | 融資を受けた場合の利息を自治体が負担 |
メリット
- 金利負担がほぼゼロになる場合も
- 事業継続や創業時の支援に特化
- 公的支援なので安全・返済条件が明確
相談先
- 各自治体の産業振興課・商工課
- 商工会議所の経営相談窓口
- 中小企業庁ミラサポPlus
公的制度は「知らないと損をする」ケースが多く、まずは自治体のホームページを確認することをおすすめします。
⑤ クラウドファンディング・オンライン融資:新しい時代の資金調達
近年注目を集めているのが、クラウドファンディングやオンライン融資サービスです。
デジタル完結でスピーディーな資金調達が可能です。
種類と特徴
タイプ | 例 | 特徴 |
---|---|---|
購入型クラウドファンディング | CAMPFIRE、Makuake | 商品・サービスを先行販売して資金調達 |
融資型クラウドファンディング | クラウドクレジット、Funds | 投資家からの融資をオンラインで受ける |
オンライン融資(フィンテック系) | OLTA、SMBCクラウドサインローンなど | 売上データをもとにAI審査で融資額を決定 |
メリット
- ネット完結でスピードが早い(最短即日)
- 新規事業・プロジェクト資金に向いている
- 担保・保証人が不要
注意点
- 手数料や成功報酬が発生する
- クラウドファンディングは目標未達成だと資金が得られない
- 信用性の低いサービスには注意が必要
安全な資金調達には「透明性・実態・公的性」がカギ
違法ファクタリングに手を出してしまう人の多くは、「今すぐ現金が必要」という切迫した状況にあります。
しかし、焦って怪しい業者に申し込むことが最悪の結果を招く原因です。
安全に資金を調達するためには、次の3つのポイントを必ず確認しましょう。
チェックポイント | 解説 |
---|---|
① 実態が透明か | 会社情報・契約書・所在地を確認 |
② 合法な手段か | 売掛金を用いた取引、または登録済み融資であるか |
③ 公的支援が使えないか | 公庫・自治体制度を優先的に検討 |
これらを踏まえて、
- 余裕のある計画なら「銀行融資」や「公庫融資」
- 急ぎの資金繰りなら「合法ファクタリング」
- 創業・再起支援なら「自治体制度」
というように目的別に選ぶことが重要です。
このように、違法ファクタリングに頼らなくても、合法かつ安全な資金調達の道は多数存在します。
正しい知識と冷静な判断が、あなたの事業と生活を守る最大の武器となるのです。
違法ファクタリングに関するよくある質問(FAQ)
- 1. 違法ファクタリングを利用してしまった場合、返済しなければならない?
-
いいえ。実態が「貸付」であると認定されれば、返済義務がない場合があります。
すぐに弁護士や法テラスに相談しましょう。 - 2. 給与ファクタリングを利用したが、返済できない。
-
返済の強要・脅迫は違法行為です。警察・消費者センターに通報してください。
- 3. 合法的なファクタリング会社をどう見分ける?
-
「法人登記済み」「所在地・電話番号が明記」「売掛先企業の確認を行う」会社が安全です。
- 4. ブラックでも利用できる合法な資金調達方法は?
-
ただし「給与」ではなく「売掛金」がある場合のみ有効です。
まとめ:違法ファクタリングに注意し、安全な資金調達を選ぼう
「即日現金化」「審査なし」「ブラックOK」といった宣伝の多くは、**違法ファクタリング(闇金)**です。
実態は高金利の違法貸付で、返済地獄や脅迫などのトラブルに発展するケースもあります。
しかし、焦らず行動すれば、安全で合法的な資金調達方法はいくつもあります。
- 銀行融資・信用金庫:低金利で信頼性が高い
- 日本政策金融公庫:創業・小規模事業者向けの公的融資
- 合法ファクタリング:売掛金を活用した即日資金化(借入ではない)
- 自治体制度融資・補助金:低利または無利子の支援制度
違法業者に関わってしまった場合は、警察(#9110)や消費者ホットライン(188)、法テラスへすぐに相談しましょう。
返済義務が無効となるケースもあります。
資金繰りに困ったときこそ、冷静に選択することが大切です。
透明性のある会社・公的制度・信頼できる専門家を活用して、
安全かつ確実に資金を調達しましょう。